Ver.Ranka 〜Love Song for you〜 序章へ
☆☆☆☆☆Boy meets Girl☆☆☆☆☆
はぁっ、はぁっ、はぁっ…、AM:8:20
坂を駆け上がる少女の顔は紅潮して荒い息を弾ませている。
「もぅ…だめだよぅ…遅刻しちゃう」
15歳のランカ・リーは、時間をチェックして、ぜいぜいとようやくその存在を主張し始めた胸を上下させながら絶望的な声で呻いた。
今日は聖マリア女子学園の入試の日。聖マリアへの入試はランカの育ての親代わりであるオズマ・リーの厳命だった。フロンティア船団の数ある学校の中でも屈指の名門女子学園へランカを入学させることはオズマがランカを引き取って育てている上での、惜しみない教育を与えてやれる…という指針であるのかもしれなかった。
ランカ自身は(ちょっと制服が可愛いな…)という程度で、オズマが行けと言うなら、兄の為にがんばってみよう…という兄を思っての受験なのだった。その熱意の差は、受験当日の今日もトラブルを引き起こした。
受験に向けて真面目にカリキュラムをこなして来たランカは淡々と今日を迎えて、いつもより少し早めに起きて会場へ向かう心づもりでいた。…しかし…
『明日の朝はお兄ちゃんが、家のことは全部やるからな!ランカはなぁーんにも心配しなくていいぞ!』はっはっはっ……と、満面の笑みで胸を叩いた兄はランカを思って言ってくれたのだ。それは痛いほどランカは分っていて、かすかな不安を抱えつつ、
「ありがとう、お兄ちゃん」と兄の好意に感謝して最後の復習を終えてベッドに入った。……そして……
『どぅぁぁぁぁぁっっ!』ドンガラガッシャーン!!!…とけたたましい騒音と共に兄の叫びで叩き起こされたランカは、いつもの朝の3倍の手間を描けざるを得なくなり、遅刻ギリギリの時間に飛び出すハメになった。何の役にも立たなかった兄が送って行くから…と車を出したものの、仕事先のSMSからなにやら急用で出向かざるをえなくなり、結局はあと十数分の間にどれだけ走れるか…絶望的な思いでランカは慣れない道をひた走っていたのだった。
「やーんっ!後15分……」
近道…と信じて回った林でランカは見事に迷子になってしまった。どうしよう…と、腕時計を見た瞬間、ランカの背後の空でキラリ…と何かが点滅し、「!?」ジェット音と共にみるみる何かが背後から迫って来た。「きやぁぁぁぁっ!」
“それ”は、ランカの上空数十㎝を掠めて盛大に木の枝を伐採しながら、ランカから数m離れた場所へ転がるように着陸した。いきなり襲って来た“何か”の風圧で派手に転んでしまったランカは「…ってぇ〜」
少年の声に顔を上げた。
「くそ!ルカのヤツ、何が安全だ!」激しく毒づきながら、体勢を立ち直らせようともがくようにしていたのはEXーギアを装着した少年だった。(男…のこ?)声は少年かと思ったが、とても髪の毛を長くポニーテールにしている。その人がヘルメットを脱ぎ捨てる瞬間、頭をふるん…と大きく振り、ポニーテールの髪の毛をまとめている紅い髪紐がひどく印象的にランカの瞳に映った。
「やば…っ!!人がいたのか!」
彼は、ランカに気付くと慌ててこちらへとやって来た。「おい、大丈夫か!!?」その人は泥だらけのランカを起き上がらせようと慌ててこちらへやって来た。「おんな…のこ?」
その人はびっくりするくらい整った顔をしていた。まるで…
「お姫さま…みたい」その言葉がランカの脳裏でリフレインする…
(お姫…さま…)
「な…!」その人はむっとした表情で声を上げようとして…まっすぐにキラキラひかるランカの瞳と目が合うと抗議しようとした声を納めた。
なんのてらいも、揶揄の意味もない、純粋な賛辞…。
「言っとくけどな、俺は男だ。」
「えっ!」紅い光彩を真ん丸な目をして少女はその瞳に負けないくらい頬を紅に染めてもう一度少年を見上げた。「ご…ごめんなさい…あたし…」そう謝りかけて、ふと時計に目が行った。
「あぁぁぁっ!」少女を助け起こそうとした少年がいきなりの叫びにビクりと肩を揺らす。「な…なんだ!?いきなり?」
「時間が〜っ!もう…間に合わないよう」少女は涙目である
「どうした、お前?」
「それが…」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「だったらもっと早く言え!」
「だ…だって…」
ランカは、少年のEXーギアの腕に抱かれて空を飛んでいた。
受験に遅れそうだ…と聞いた少年は有無をいわさず、素早くEXーギアを装着し直すとランカを抱え上げて、最短の滑走をつけて飛び上がった。少年は、早乙女アルト…と名乗った。
「こいつなら、ひとっ飛びだ。走るより全然早い…間に合いそうか?」
「な…なんとか…っ」…言われて、一瞬あんまり早く着かないといいな…と思ってしまった自分に戸惑ってしまう。
「それにしても聖マリアを受けるって、お前…お嬢様なんだな」
「ち…ちがうよぉ!お兄ちゃんが、どーしてもここがいいって…」
「へぇ?」
「アルトくんは美星学園なんだね。」
「ああ」
その時、ランカは自分が聖マリアを受験することをちょっぴり残念に思った。もう少し早くにこの男の子と会っていたら、兄の意見に従うだけじゃなくて、自分の希望を言えたのに…。
「着いたぞ。」
彼、早乙女アルトの言った通り走るよりは全然早く、受験の開始時間前に聖マリアに到着した。
「ああの…あたしね…」
「早く行けって!遅れるぞ!」
「あたし、ランカ・リーっていうの!」その場から飛び立とうとしていたアルトが振り返った。
「いい結果出るといいな。」そう言ってふわりと微笑む。
その笑顔を絶対忘れられない…とランカは思った。
「ありがとう、アルトくん!」
受かったら、報告に行こう…。とランカは心に決めた。その為には受からないといけないけど…でも精一杯頑張ろう…。
ランカは、今朝のトラブルを引き起こした兄にちょっぴり感謝しつつ、聖マリアの校舎に駆け込んで行った。
《To be continue…☆》
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…これは、映画版での2人の出会いはどんなかな〜…って考えた時に、多分凄く前からの知り合いだと
きっとランカは美星学園に入学していたんじゃないかな…と思ったんで
だとしたら、こんな出会いのタイミングではなかろーか…と妄想して思い付きました。
ここから、夏に新刊だせたらいーなー…と思っています。
まぁ、スペース取れたらいいんだけど…。
今までも、だけど、これからランカを全身全力で応援して行きますよ〜☆
仕事も頑張るけど、なんとか、こちらも平行していけたら……努力します〜(^^;
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